ROUNDTABLECAREERS AT AIRION
ROUNDTABLE / 座談会
15分止めたら、大問題。
ラダーの現場を知る3人が語る、AIとFAのこれから。ラダーエンジニアの小野寺奉彦、AIエンジニアの野村浩太郎、CTOの大熊拓海に集まってもらいました。
ROUNDTABLE / ラダーエンジニア座談会OPENING
THE FULL STORY
Airionは、製造業のラダープログラムにAIを持ち込もうとしています。ただ、その仕事はAIエンジニアだけでは成立しません。ラダーを書いてきた人の知識と経験が、どうしても必要になる。
今回は、ラダーエンジニア(PLC・ラダー制御設計エンジニア)の小野寺奉彦、AIエンジニアの野村浩太郎、そしてCTOの大熊拓海の3人に集まってもらいました。
ラダー界隈のあるあるから、この業界が抱えている構造的な問題、そしてAIで何が変わるのか。かなり率直な話になりました。
ラダーにAIを持ち込む仕事は、AIエンジニアだけでは成立しない。ラダーを書いてきた人の知識と経験を、どう言語化し、どうAIに渡すか。そこがいちばんの難所であり、面白さでもあります。
THE STORYTHREE VOICES FROM THE LADDER FRONTLINE
01
「無意識でやっていることを、言葉にする」
Q.まず、いまどんな仕事をされているか教えてください。
小野寺野村さんなどのAIエンジニアから依頼された資料や、AIが出力した結果をレビューする仕事が多いですね。エンジニア目線でどう思うか、現場で使えるものになっているのかを見る、という。
Q.やってみて、最初の想像と違ったところはありますか。
小野寺今までのノウハウを言語化する作業が多いんですよ。これが結構難しくて。普段考えていることって無意識でやっていることなので、それをまとめるのが難しい。人に、というかAIにノウハウを伝えるのが難しいな、というのが、日々いちばん思っているところですね。
野村実際にヒアリングを進めていくと、そこがかなりキーになるんです。「これ、聞かないとミスってたな」という場面が本当に多くて。ドメイン特化のAI開発にとって、それくらいクリティカルなフィードバックを、小野寺さんをはじめラダーエンジニアの方から聞けている。AIモデル開発にとって、すごく生きていると思います。
02
どこまで自分で学び、どこから聞きに行くか
Q.野村さんから見た難しさは、どういうところですか。
野村自分が知らない知識を語って、AIモデル開発に対峙しなきゃいけないところですね。数学やコーディング、自然言語タスクのような一般的なものなら、ある程度は自分の知識があります。でもラダーや製造業の知識は、AIエンジニアである僕は知らない。もちろん学んではいますが、その膨大な情報を全部キャッチアップするのは現実的に難しい。だから細かい部分は、どうしてもラダーエンジニアの方に聞かなければいけない。
どこから聞くべきか、どこまで自分でキャッチアップするか。そのラインを引いて、少ないコストでどれだけ引き出せるか。そこが難しさであり、やりがいでもあると思っています。
大熊ここは、実は自分もすごく思うところです。
この業界に携わらせていただいている以上、ラダーの勉強はしようと思って、本を買ったりネットの記事を読んだりしているんです。一応、理解はできるなと思う。でも、実際に現場のコードを読ませてもらうと「全然レベルが違うんだけど」と思って、理解できなかったりする。そこのギャップを感じることは、すごく多いですね。
Q.ラダーエンジニアとAIエンジニアが、すごく密にやり取りされているんですね。
03
15分止めたら、大問題
Q.逆に、ラダーの仕事の厳しさも聞かせてください。
小野寺まあ、いつも厳しいんですけど(笑)。たとえば自動車の現場だと、ラインを長時間止めるとものすごい損失が出るんですよ。15分止めてしまっただけでも、社内的に大きな問題になる。だからミスができないんです。
お客様のソフトを入れ替えるときなんかは、何年経っても胃が痛い思いをしています。
Q.たった15分でも、そんなに。「胃が痛い」という言葉の重みが違いますね。
小野寺本当に、ミスができないんです。
04
「この業界があること自体、知られていない」
Q.ラダーエンジニアという仕事そのものについて、いま感じている課題はありますか。
小野寺こういう業界があること自体を知らない人が多いんですよね。僕自身、この業界をやるつもりなんてなかったんです。たまたま1社目に入った仕事がそれで、やるはめになっただけで。
普通のプログラマーなら、ネットで勉強していればサンプルもいくらでも転がっている。でもラダーは、プログラムが好きな人でも知る機会がない。工業高校に行っていれば触れる機会はあると思いますが、他の学校だとそういうものが存在すること自体を知らない。
だから、発信していく必要があると思うんです。いろんなメディアで「こういうものがあって、面白いんだ」とやっていく人が。
Q.なぜ、これまで発信されてこなかったんでしょう。
小野寺NDAが多くて、なかなか喋れないんですよ。だから探しても初心者向けの情報しかない。そこをどうしていくかが、いちばんの課題なのかなと。「ガラパゴス」と言われるこの業界を、なんとか打開しないといけない。僕も個人でブログを書いたりはしているんですけど。
Q.そういう状況のなかで、どんな方と一緒に働きたいですか。
小野寺新しいもの好きの人ですね。ラダーエンジニアにもいろんなタイプがいて、新しい知識を勉強するのが好きなタイプと、新しいことを学びたくないタイプがいるんですよ。学びたくない人は、この仕事はもう成り立たないと思います。PCのプログラムを書いてみたいとか、AIで新しいものを作ってみようとか、そういう人じゃないと行き詰まる。
05
Web開発は恩恵を受けた。FAは、まだ
Q.Airionでなければ得にくい面白さは、どこにあると思いますか。
大熊IT × OTの領域でAIを活用するというのが、自分としてはすごく面白いと思っています。
OT側の技術体系とIT側の技術体系は、連携はできますが、まったく別に育ってきた部分があるんです。AIはIT側の技術基盤の上に作られてきたので、OT側との連携は、これまであまり進んでこなかった。
大手のメーカーさんでもAI活用は進み始めていますが、この領域については、今までちゃんと進んでこなかった。だからそこに自分たちが先陣を切って入っていく。
もちろん、現場の理解が足りなくてうまくいかない部分も、受け入れられない部分もあります。でも、それも全部含めてフィードバックをいただいて、どういうものがあればクライアント企業全体として良くなるのかを考えて試行錯誤していく。すごく面白くて、意味のあることをやれているんじゃないかと思います。
野村Airionは日本の製造業、特にFAにフォーカスしています。その現場を支えている方々の中には、ラダーを書かれているソフト・制御系の方や、機械設計の方がいらっしゃいます。そうした領域でも、いま人材不足などの課題が大きくなってきています。
そして、汎用的なWeb開発の人は、コーディングでAIの恩恵をすごく受けている。でもFAやラダーは、まだ全然受けられていない。そこにちゃんとAIを使っていけるようにするのは、やらなければいけないことだと、使命を感じています。
小野寺ラダーを使う人はどんどん減っていますし、現役の方も高齢の方が多い。新しい人も入ってこない。AIに頼るしかなくなるのは、もう見えているんです。だから使命感を持って、AIによるラダー生成の活用を加速できるように協力できる方がいいのかな、と思います。
06
「実験できる設備、実はめちゃくちゃ作りたい」
大熊ひとつ、正直に言わせてください。
先ほど小野寺さんが「まだそんなに現場に行けていない」とおっしゃっていましたが、これだけ現場で活躍されている方が協力者としていてくださるのに、その力を発揮しきれていないのは、絶対にこちら側の力不足だと思っています。我々の解像度を上げて、やれることを増やしていかないといけない。そこは強く思っているところです。
小野寺確かに、現場に行く回数は少ないですね。ラダーエンジニアって、現場に行くのが好きな人が多いので、そこは物足りなさがあると思います。増やしていった方が、人も呼び込みやすいのかなと。
あと、いまは難しいかもしれないですけど、自社で実験ができるような設備があったら、いちばん面白いと思うんですよ。実験的な設備があれば、みんな学べますし。
大熊それ、実はめちゃくちゃ作りたいと思っていまして。
設備を連携させるものを作っているんですが、設備がない状態でそれを作っても、開発が遅いしやってられないと思うところがあって。しっかり作りたいんです。作る際にご協力いただけたら、面白くなってくるのかなと。
小野寺(笑)なんか、けしかけたみたいですみません。
大熊いえ、小野寺さんに誘発されて言ったわけじゃなくて、私もないとなと思って、ずっと悶々としていたところなので。
07
最後に、これから
Q.最後に、あらためて一言ずついただけますか。
大熊AIがどんどん進歩していく中で、AI技術は民主化されていく方向に行くと思っています。敷居は下がっていく。そうなったときに最終的に大事になるのは、どこまで現場を深く理解できるか、真のニーズを掴めるかなんです。
AIは使えるし、できることはどんどん増えていく。でも実際にどういう課題があって、しがらみで使えないことがあって。現場で実際に活躍されている方の生の声を、どこまで深く反映していけるか。それができるかどうかで、私たちのサービスがどこまで世の中に価値のあるものになるかが決まると思っています。だからラダーエンジニアの方とは、もっと連携を深めていきたい。
小野寺AI化を進めることもそうですし、この職種があると知ってもらうことも、ラダーエンジニア全体のレベルを上げていくことも、全部やらないといけない。課題はいろいろあります。それを打開したいと思える人と、一緒にやれたらいいですね。
野村現場を支えてきた方々が、いま人手不足などで厳しい状況に置かれている。だからこそ、そこにAIを届けていく。これは、私たちがやらなければいけないことの一つだと思っています。